現場リポート:2023年7月1日
例年は現地でのグループワークにて実際に身体を動かしながら学ぶ形式ですが、今回は時勢的にWeb開催となりました。しかし、スタッフの先生方が今回のために作り上げた、参加者の行動や指示によって患者の状態が変わりバイタルや検査データが表示されるシステムのお陰で実践さながらの研修を行うことが出来ました。このレクチャーにかける先生方の情熱に感嘆した次第でした。
さて、本題ですが、本講義の目的は、Walk inで救急外来を受診したけれども危険な状態(ショックなど)にある患者をトリアージし、状態を立ち上げて適切な治療につなぐ過程を学ぶというものでした。参加者は6人程度のグループに分かれ、各テーマ(胸痛・呼吸困難・吐血・腹痛・麻痺)のブース毎に指導医が2名ずついらっしゃいました。
合言葉は、ABCがおかしいぞ、臥位にしてバイタルチェックだ、部屋を移動しOMI(酸素投与・モニター・静脈路確保)です。このフレーズは講義中に何度も登場し皆で合唱(?)するシーンもあり、終始楽しく学ぶことが出来ました。
診察は、ベッドがありバイタル測定と診察のみが可能な診察室にて、看護師が1名ついてくれている状況で始まり、患者の状態に応じてOMIが可能な処置室に移動して(救急科医師への相談必須)さらに介入するという流れでした。看護師は受けた指示のみを時には嫌々こなすだけだったり、救急科やその他対診先の医師が怖めだったりすることがあったりとまさに実践的でした(笑)。
また、バイタルをとるにしてもどのバイタル測定を依頼するのか、バイタルのどこが異常だから処置室に移動するのか、移動の手段は、酸素投与はどのデバイスで何L投与するか、モニターは何をつけてもらうのか、何Gで静脈路を確保するのか、点滴の内容は、なぜ緊急の対応や対診が必要なのか等々、きっちりと考えを持って指示しないと状況が進まないという設定となっており、自分がこれまで行っていた診療を改めて見つめ直す良い機会になりました。
最初にショックの病態を学び、アナフィラキシーショックの症例を経験した後に、上記の5つのテーマのブースで学びました。胸痛では心筋梗塞・大動脈解離、呼吸困難では重症喘息発作・急性喉頭蓋炎、吐血では上部消化管潰瘍出血・静脈瘤破裂、腹痛では子宮外妊娠・腹部大動脈瘤破裂、麻痺では低血糖・急性期脳梗塞、の症例が用意されていました。どれも緊急性が高く、かつ適切な対応が必要な疾患であり非常に学びの多いワークでした。
末文とはなりますが、素晴らしい講義をご準備いただいたスタッフの先生方に謝辞を申し上げ、レポートを終えさせていただきます。
【開催日】
2023年7月1日(土)
【テーマ】
診療実践コース:T&A救急初療(病院版)
【講師】
山畑 佳篤
(京都府立医科大学 救急・災害医療システム学)
斎藤 裕之
(山口大学医学部附属病院総合診療部)
【研修目標】
・病院救急部門において遭遇頻度の高い症候(頭痛、胸痛、腹痛、痙攣など)に対して見逃してはいけない疾患を想起できる
・病院救急部門において遭遇頻度の高い症候に対して診療最初の10分間を適切にマネジメントできる
・救急初期対応に関して知識として持ち合わせていることを、シミュレーション実習を通じてできるようになる